「それでも私は……」

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 毎朝乗っている電車の中から、ホームを見ると、そこに居た彼女。  色白で、黒目がちで素朴な感じ、都会の雰囲気は無いがどこか上品な女性。きっと歳は近いんじゃないかな。女優さんやアイドルのような華やかな雰囲気ではないが、そこに居る存在感、と言うのか、その空気感、と言うべきか。  それに、どこか、懐かしいような雰囲気がある。  彼女を見た私は、思春期の少年と同じレベルのスピードで恋をした。  それからである。  モヤモヤした髪を綺麗に整え、ヨレヨレのスーツも新調、眼鏡をコンタクトに変更して、猫背をシャキッと伸ばして出勤した。  彼女と会う為に、一時間早く出社している。  彼女の居たその駅で、電車を四つ程乗り過ごしてから出社する。  来る日も来る日も彼女を待ったが、彼女はあれから現れない。
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