ある夜の帰り道

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「あ…」 自販機だ。この時期なら温かい飲み物もあるはずだ。 思わず駆け寄って、商品を確認する。 ホットコーヒー、紅茶、ココアにミルクセーキか。 意外と充実したラインナップだ。 ここは…ミルクセーキにしよう。ココアも捨て難いが自販機のココアは薄くチープな味わいだから、今の気分では合わない。今はとにかく甘く温かいものを飲みたいのだ。 ガチャン 購入して、早速手に取る。 「ああ~あったかいなぁ…」 缶を包み込むように両手で持つと、冷え切った手に熱が一気に伝わっていく。 気持ちまで一気に持ち直したような感覚にもなる。 しばらくはそのまま歩いていき、両手から寒さによる硬さが抜けた所で飲む事にする。 「はあ~」 一口飲んで、思わず息を吐く。甘さと温かさで気が緩んだのだろうか。 思考が緩やかに穏やかになっているのが分かる。 ああ…そうか。 気を張り過ぎていたのか…。 疲れと気を抜けない状態に寒さが加わって更にガチガチになっていたのだろう。 これでは、精神も張り詰めてしまうというものだ。 「ふう…」
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