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静かに、深く深呼吸をして、一気に残りを飲み干す。
一瞬ではあるが、身体に熱が入る。
「まずは…謝っておくか…」
冷えたスマホを取り出し、彼女へと電話をかける。
まだ家まではかかるし、寒さも変わらない。
だけど、熱が入った心なら…きっと。
「あ、もしもし、俺だけど…さっきはごめん。…それで…変わりというかさ……」
冷えたスマホで冷えていく左手とは裏腹に、段々と熱量が増していく頭の中で、予定の調整が進んでいく…
「…うん、そうか。じゃあ、そんな感じで…うん、ごめんな。…ああ、おやすみ」
…なんとか日にちをずらして約束を取り戻す事ができた、か。
…あのまま帰っていたらもっと拗れていただろうなぁ。
そんな事を考えると、ふと、あの自販機とミルクセーキに感謝の気持ちが湧いてくる。
いつもは通り過ぎるだけの存在だが…そこに在った事で、幸せを逃さずに済んだ。
「分からないもんだなぁ…」
ちょっとだけ人生の妙を感じた帰り道。
それから家に着くまで、寒さは気にならなかった。
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