万年青〔オモト〕くん

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万年青〔オモト〕くん

「それ・違うよ」 5月の連休が終わった次の日・後ろから声がかかった びくっとして振り向くと 男の子が立っていた/ 髪の毛がたぶん天パでくるっとしてる すぐに同じクラスの子だとは分かったけど・名前がでてこない 「それ・ボクとおんなじなんだ」 何を言ってるのだ・と私のカラダは固まってしまった この男の子は何だ? 「同じクラスだよね・確か〔いろはにほへ・〕さん だっけ?」 顔が赤くなるのが分かる さすがにそんな名前ではないが・私の名前を知っていて わざと言ってるのだ 「ボクの名前は・覚えてくれてなさそうだね」 男の子はしゃがむと・落ちていた小枝で地面に文字を記す 『尾本 広夢』 「おもと ひろ・む・くん?」 「当たりっ/ で・あれも 『おもと』 って読むんだ」 あのネームプレートを指差した 〔万年青〕は〔オモト〕と読む 「コテンエンゲイショクブツではユウメイなヒンシュなんだから」 コトバは聞き取れても・漢字変換できないとイミガワカラナイモノだ アトからそれが 〔古典園芸植物〕 だということは分かった 「ボクのおじいちゃんが好きでね・覚えちゃった」 「葉に見られる〔芸〕に関しては・この〔万年青〕が一つの標準なんだよ」 葉っぱが〔芸〕をする 漢字に変換できても・知らないセカイのコトバはやっぱり分からないものだ 〔同じクラスの髪の毛が天パでくるっとしてる男の子〕 が〔おもと ひろむ・くん〕であることは・私のセカイに入ってきた
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