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この平坦な繰り返しに何も疑問も持たない僕は僕自身も実に平坦で、希望も絶望も抱くことはないけれど、どんどん平たくなっていく自分が不安なんだ。
僕は僕であって僕じゃなくなって行く。この繰り返しの単なる一部分でしかない。
「ねぇ、苦しかったら終わりにしても良いんだよ? 」
立ち上がった彼女は振り向くことなく言った。
「終わり? 終わりって何」
「終わりは終わりよ」
「始まりも無いのにどうして終われるの」
「始まりは終わりなのよ。だから終われば始まれる」
「そうじゃなくて! 今に終わりがあるんだったらいつが始まりだったのか」
「だから。今が終われば、今が始まる《・・・》」
「逆だろう? 」
と、そこで彼女は振り返った。今にも泣き出しそうな悲しい微笑を浮かべていた。
「終わりがあるから始まるのよ」
そう言った彼女は一体何が悲しいのか。僕にはすぐにわからなかった。
「始まりがあるから終わるんだろう? 」
僕がそう返すと彼女はいっそう悲しそうな目をした。
それはまるで僕を哀れんでいるようだった。
「逆よ」
彼女の言葉はまるでゆったり静かに吐き出されたのに、刃物のように僕を目掛けて飛んできた。ぐさりとどこかに刺さった気がした。天と地が逆転したような衝撃。僕は逆さで視界がくらくら回っているのに、彼女は真っ直ぐ地面に足を突いて立っている。
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