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「う、おおおおおお!」
「ぐおおおおおおお!」
どちらがどちらの咆哮かもわからなくなった時には二人ともすでにボロボロであった。
立っていられるのが不思議なくらい。
それでも両者は倒れなかった。
刹那、決着が訪れる。
魔王が水平に薙いだ魔剣を勇者は聖剣で受け止める。しかしそのあまりの力に勇者は体勢を崩した。
魔王はその隙を見逃さずもう一方の魔剣を突き出した。
勇者が避けようとするが、間に合わない。
魔剣は勇者の身体に深々と突き刺さった。
その光景を見た魔法使いが悲痛な叫び声をあげる。
―勝った。
そう魔王は確信した、そしてその緩みを唯一のチャンスを勇者は見逃さなかった。
「はああああああ!」
最後の力を振り絞り聖剣を振りかぶる。聖剣からは今までにないほど眩い光が放たれていた。
そして、聖剣が魔王を捉えその上体と下半身を両断した。
「ごぉあああああ!」
魔王が崩れ落ちる。
同時に勇者も。
魔王が倒されると同時、仲間たちを取り囲んでいたモンスター達も消滅した。
すぐさま魔法使いが勇者に駆け寄り回復魔法をかける。
しかし勇者の血は止まらない。
目は開かない。
魔法使いが泣きじゃくりながら「なんで!なんで!」と叫ぶ。
「無駄だ……その魔剣は森羅より万物を切り離す剣、その剣で破壊されたものはなにをしても元には戻らぬ」
魔王はそう言い残し、最後に勇者を視界に捉えた。
見事だ、勇者よ。
そして魔王は目を閉じた。
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