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「その左ポケットに入ってる折りたたみ式ナイフ。それで殺したんでしょう? 8人の女子高生を」
昔からナイフが好きだった。趣味で骨董品だったり、ガラス製の珍しいものだったりを集めていた。
今朝たまたま見つけたお店で買ったナイフ、それを左のポケットに入れたままにしていた。全て見られていたのだろう。
僕は毎日彼女を待っているつもりだったが、違ったようだ。
彼女が僕を待っていたのだ。この状況に追いつめることができる、今この瞬間まで。
なぜただの女子高生がこんなことをするのか、全く理由は分からないがこちらの弱みまで見越した計画的犯行なのは間違いない。
話を聞いていたらしい周りの客がざわめき始め、やがてスマートフォンを取り出し
小声で通報し出す者まで現れ始めた。
左手をポケットに突っ込み、ナイフの感触を確認しながら僕はうなだれた。
どこまで仕込まれているのか分からない。
もしこのナイフに被害者の血が付着していたりしたら、もう終わりだ。
苛立ちは限界を超え、真っ白になった頭の中をしかし一つの決意が支配していた。静かに長い長いため息をゆっくりと吐いて、僕は小さく呟いた。
「殺すか」
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