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その発言を皮切りに僕はバネのように立ち上がり、左手にもっていた折りたたみナイフを一直線に彼女の首筋へと振り抜いた。
ドスっという鈍い音と同時に、彼女が呟く。
「正体を現しましたね」
彼女の右手に握られた『我が輩は猫である』の文庫本に僕のナイフの切っ先が突き刺さっていた。
「なっ……ぐあっ!!」
絶句している僕を周囲の客が押さえつけてくる。
数名の男に押さえつけられながら怒りのままに僕は叫んだ。
「殺す!! おまえを殺す!!」
彼女は口角をあげた。今までで一番の笑顔だった。
老人の店主に「先に警察署に向かってます」とだけ告げ、彼女は足早に店を出て行った。
「ふざけるな、待て、待てえええええええええええ!!!」
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