1.スマホが通じない

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小学校時代から携帯電話を待たされたこともあり、外での公衆電話には無縁だった亮太にとって携帯電話、スマートフォンは生活の一部の様なもので、液晶画面でのタッチやフリック操作もお手の物であったが、緑の公衆電話を触った事も初めてなら あの大きな受話器も家庭にあるコードレスのハンディーフォンと比べてその数倍はあろうかという重量感も初めてのことで、まさに初体験の電話を掛けると言う行為だった。   そもそも電話を使って話をすると言うこともこの数か月間した記憶が無くて、母親からの電話を受けて話したのが最後だったような気がした。  スマホはメールを送るか SNSのグループトーク機能でテーブルの上に置いて 数人で普通の会話のように話し合う事が常の事で、受話器を持っての通話という形そのものが久しぶりの事だった。 そこへ、20分ほど前に家に帰ったはずの 旬と同じゼミの松橋純太が走って近づいてきた。 「旬、電車の切符を買うのだけど 金、貸してくれないか。」 「どうしたんだ、純太、定期があるんだろ?」 「俺の定期 スマホに入ったモバイルタイプなんだよ。 だから電車に乗るのも 店で買い物するにもスマホがあれば全部出来るんだけれど・・・」 「ダメなんだよ 駅の改札が開かないんだ。」 純太は スマホの不具合から電車にも乗れなければ、小銭も電子マネーで全くお金が動かせない現状にあきれ果てたような顔をした。 「ホントか、スマホが駄目だと、電車にも乗れなければ 電子マネーもダメなのか?」 旬にも自分たちが今置かれている これまで考えることも無かった便利な電子機器が無力化していることにあきれ果ててしまった。     
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