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買い物帰りに必ず駅へ行ってベンチに座り「誰か」を待つ女性の話。誰を待っているのか、何を待っているのか、女性は自分でもわからない。けれども彼女は「待つ」。
とても短い小説で、はじめて読んだときは訳がわからなかった。ある時ふと女性は何を待っていたのかが気になり何度も読み返してみた。読み返してもよくわからずそのままにしていたら、しばらくのちにふっとひらめいた。
女性が待っていたのは「救い」だったのだ、と。
「待つ」についての論評に同じようなことが書かれているものがあった。ただし、待っていたのは「救い」というより具体的な人としての「キリスト」であろう、と。
「待つ」が書かれたのは戦時中ということもあり、当時の世相を表していることは間違いない。待っていたとされるものは「救い」「キリスト」もしくは漠然とした「不安」……。
けれど僕には、女性が待っていたのは「キリスト」ではなく、やはり「救い」だったのではないかと感じていた。
ラストで女性はこう言っている。
「私を忘れないでくださいませ」
「どうか覚えておいてくださいませ」
「お教えせずとも、あなたはいつか私を見かける」
僕はハッとした。女性が待っていたのは「運命」だったのかもしれない。「救い」などの具体的なことではなく「運命」そのもの。「運命」に自分を見つけてほしかったのではないか。
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