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「いいえパパ。
之宣さんは確かにいたの、いえ、今も。
いて、私を、もてあそんだ。
パパは七年前までの之宣さんしか知らないから信じられないでしょうけど……」
ふふ、と、どこか自嘲気味に娘は笑った。
「彼……とても素敵に成長したわ。
ぷれいぼぉい、とかいうやつね。
誰もが彼に魅了されて、そして私も、そんな、大勢いる彼の取り巻きの一人だった。
私はなんてしあわせものなのかしら、って思ったわ。
だって、私みたいな平凡な容姿の人間が、彼みたいな素敵な男性に相手にされるはずなんてないから。
だから、そのときは、パパに感謝した。
だって、パパが浅野さんのおうちとおつきあいがあるから、私も之宣さんとおつきあいすることが……男女の関係になることができたんですもの」
その当時を思い出してか。
娘は、夢でも見るようにうっとりとした表情を浮かべていた。
が。
次の瞬間、娘の顔が一変する。
「よくも騙したなあああああああああああああああああああああああああああああああ!」
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