一話 帝都の敵

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「あるんですよ、平行世界は。現実に。  概念でも空想でもなく確かに存在していて、そして、やってくるんです。  平行世界から。恨みを晴らすために。この世界に。  別の世界からこの世界に来て、この世界の自分自身に憑依して、そうすることで力を得るのです」  毒島のその説明を。  男は終始驚きを顔に張り付けたまま聞き。  大阪と娘は、ただあるものとして聞いていた。  にわかには納得できなようすの男に対し、毒島は丁寧に、なんどもなんども言葉を代え、たとえを交え、懇切丁寧に説明した。  やがて、男は、完全にではないものの、一応、納得してくれたようだった。 「じゃ、じゃあ、今の話は……この世界であったことではなく、アッチの世界であったということなのか……?  今、娘は、アッチの世界の娘に憑依されている、と……」 「そういうことになります」  毒島はうなずき。  誰もその言葉を否定しなかった。  大阪も。  そして娘も。
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