一話 帝都の敵

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「それでも、許せなかった。  復讐したかった。  彼の……之宣の親しいものたちに」  それが、怪人・赤マントの動機だった。  娘はもはや語る言葉をなくし。  男もただ、ぼんやりと、娘を見ていた。  ひょっとしたら存在していたかもしれない、凌辱され、裏切られ、あげく、自分をもてあそんだ男、その家族に復讐を果たした娘の姿を。  やがて。  ふっ、と、娘のまわりの空間がゆがんだ。  すると。  娘の表情が一変する。  憎しみを貼り付けた険しい表情から、悲しみを浮かべた弱々しい表情へと。 「どうやら、コトワリは、元の世界に帰ったようです」  毒島が言う。 「パパ」  立ち上がった娘が、涙を流しながら父親に抱きつく。
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