一話 帝都の敵

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 そんな娘を優しくだきとめる男。 「コトワリのことは完全に解明されたわけではありませんがーー」  毒島は言う。 「力尽き、元居た世界に帰る寸前の記憶は、共有しているケースが多いようです」  だから娘は泣いているのだろう。  おそらく彼女は、力尽き、怪人から元の姿にもどったとき、平行世界の自分とリンクしていた。  それで、向こうの自分が味わった屈辱を、同時に味わっていたのだろう。   だから、泣いているのだ。  悲しくて、悔しくて。  もう一人自分が、不憫でたまらなくて。 「この子は、どうなる?」  娘の頭をなでながら、男は聞いてくる。 「ああ、基本的にコトワリの罪はこちらの人間には関係のないことですからね、罪に問われるケースは少ないようです」
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