一話 帝都の敵

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 もっとも、憑依された側が率先してコトワリに協力していた、となれば話はべつだが。  だが、今回の件はそうではないことを、毒島は知っている。  超越視点で見ていたから。 「ただしーー今回の件は、決して口外しないこと。  もし、うっかり漏らしてしまえば……秘密警察が、動くでしょう。  彼らが動き、行方不明になった者がいたケースを、自分はいくつか知っています」  ごくりと、男は唾を飲み込んだようだった。    大正十六年 帝都 「号外! ごうが~~~い!」  その日も、帝都はにぎわっていた。  三十前後ぐらいの男が、走りながら号外をばらまいている。  ひらりと目の前に舞い降りてくるそれを、毒島一琢は手に取った。  さっと目を通し、 「怪人、またまた現る、か」  そこにはここ数日にかけて連続して行われた殺人事件の最新の犠牲者の写真が乗せられていた。  これで、合計四人目となる。
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