三話 裏切り者

3/71
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/377ページ
「馬鹿な……人間だと……そんな……これじゃあ……まるで……」  カミオロシじゃないか。  その言葉を、すんでのところで毒島は飲み込んだ。  そう、まるで、カミオロシだ。  自らの身に神を降ろし、神の姿になる。  毒島たちカミオロシと、このつい先ほどまでカマキリだった青年は、まったく同じ特徴を持っていた。 「カミオロシ?」  左兎が小首をかしげる。 「そ、そんなはずありません。  だって、今は当主が不在なのに……毒島さんたちだって神を降ろすことは出来ないのに……それなのに、この男がカミオロシであるはずがありません!」  戸惑いながらも、左兎は強く否定する。  彼女の言葉はわかる。   毒島だって同じ気持ちだ。  この男が、カミオロシであるはずがない。  あのカマキリが、神であるはずがない。
/377ページ

最初のコメントを投稿しよう!