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「まーた怪人か。こないだ怪人赤マントが消滅したばかりやっちゅーのに、忙しいこっちゃな」
となりを歩いていた大阪太郎がいう。
「怪人(ほんもの)かどうかまだわからないだろ?」
「せやな」
毒島の言葉に肩をすくめる大阪。
この帝都において、人々は、わけのわからない事件を怪人のしわざとして恐れるようになっていた。
……いや、あるいは、楽しんでいるのかもしれない。
生きていくにはパンとサーカスが必要だ。
安定した生活、安全な暮らし、それはもちろん誰もが望むことだろうが、それだけではつまらない。
案外、市井の人間は、怪人の存在を楽しんでいるのかもしれない。
--実害のある人間以外は。
怪人は、そんな、帝都に住む人間の畏怖と好奇心が生み出したものだ。
大抵の場合、その正体は、ただの人間だ。
人間が起こした事件でも、すこしでも謎があると、怪人のしわざと騒がれるように、今の帝都ではなっていた。
きっかけがなんであるかはもはや誰にもわからない。
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