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帝都を騒がせている怪人・赤マント。
その正体は、わずか十四の少女だった。
「こ、これは……いったいどういうことだ……?」
苦しげな表情、嗚咽をもらすように言ったのは、その洋館の主であり、また、少女の父親でもあった身なりのいい、着物姿の五十がらみの男だ。
男は、見た。
怪人赤マントが……黒赤リバーシブルのマントを羽織り、白塗りの仮面をかぶった怪人が、この十四年間、大切に育て上げてきた愛娘に変わる、その瞬間を。
娘は、すべてを憎むかのように、そこにいるすべての人間を順番ににらみつけてゆく。
「……どないしたんや? 毒島」
学生服を着た少年ーー大阪太郎は、同僚の毒島一琢(ぶすじまいったく)のようすがどこかおかしいことに気づき、声をかける。
大阪の目には、まるで毒島が、はじめてこんな経験をして戸惑っているかのように見えた。
「い、いや……なんでもない……」
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