一話 帝都の敵

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 ジト目で見られる。 「……いや、なんでもない」  こほん、と咳払いして、探偵事務所に入る。  このあとに起こる展開を、当然、毒島の中の人は知っていた。 「だーかーら!  うちのジローちゃんが行方不明なんざーあす!  なーぜ引き受けてくれないざーあすか!」  ドアを開けるや否や、凄い大声が耳を貫く。  犬を抱えた五十絡みのでっぷりと肥えたご夫人が、この探偵事務所の所長である夜剣鏡夜(よつるぎきょうや)に喰ってかかっていた。  最初は事務員である少女が相手をしていたのだが、彼女では夫人を相手にできず、所長が変わったのだ。  その事実を、プレイヤーである毒島の中の人は知っていた。  知ってたところで、得をする事実でもなかったが。 「あのですねぇ」  所長の夜剣が面倒くさそうに言う。  髪の長いホスト風の男だ。
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