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怪人赤マント。
その存在がささやかれ始めたのは、もう、二か月も前のことになる。
ある日、一人の男が殺された。
その男自体、とりたてて述べるような特徴があったわけではなく、どこにでもいる一般市民だった。
だが。
どこにでもいる一般市民にも、生活があり、人生がある。
しがらみだってそれなりにあった。
すべての真実を知る毒島は、それが市井に腐るほど転がっているようなたんなる殺人事件であることを知っていた。
幸か不幸か、帝都に住む庶民は、毒島ほど超越した視点で世界を見ることが出来るわけがなく。
だからこそ、そのなんの変哲もないはずのよくあるこじれたしがらみの末の殺人事件を、怪人の仕業と、彼らは恐れた。
キッカケは、目撃情報だ。
殺人事件のあった夜、その時間帯、殺害現場である路地裏付近を歩いていた、奇妙ないでたちの人物が目撃された。
目撃者によればその年齢・性別ともに不詳なその人物は、血のように真っ赤なマントを羽織り、また、目と口が奇妙にゆがんだ、白い仮面をかぶっていたという。
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