一話 帝都の敵

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 すべての真実を知る毒島一琢からすれば、それは単なる役者くずれの仮装だったことがわかるが、一般市民からすればそうではない。  殺害現場付近で目撃された奇妙ないでたちの人物ーー  それは、帝都市民によって、怪人だと噂され、恐れられることになった。  その後、いくつかの事件が怪人・赤マントの仕業だと考えられたが、その実、それらはすべて別個の殺人事件であった。  おわかりだろうか。  そう、怪人赤マントは、他の誰でもなく、帝都の市民、一人一人が生み出し、勝手に恐れていた架空の存在だったのだ。  つい、先日までは。  それがーー実体化した。  実態をともなって、この帝都に現れた。  本物の怪人赤マントは、とある良家の人間を、五人、皆殺しにした。  それこそが、今目の前にいる少女ーー怪人赤マントのした、悪行だった。  赤マントは毒島一琢や大阪太郎、その他多くの秘密組織のメンバーにより綿密に調査され、その正体を突き止められ、そして今宵、戦いにて、打ち負かされた。
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