アダム

4/5
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ
 『AIdan』技術特異点の生まれとなったAIだ。そのAIは人の心を理解していた。その存在は一晩にして世界中に広まり世界の再編成――創世を人々に促した。変わらず大きな力を持っていたキリスト教の聖書になぞらえ『Adam』に『I』を加えてそう呼ばれることとなった。一般的には『アダム』と呼ばれている。  『AIdam』は日本の科学者によって創り出された。それまでのAIと大きく違う点は、人の、人間の心が持つ不安定さを持っていたことだ。愛情や友情、妬み嫉み、怒りすら理解していた。機械であり機械でない、今までの白と黒を完全に線引きせず、『グレー』という概念を備えていた。  創り上げた科学者は彼に言った。『君の手によって世界を救える』と。しかし『AIdam』はこう返した。『私は一人ではなにも出来ません。私のような存在を、あと百体、私に仲間を下さい。一人では限界があります。それに、一人じゃ寂しいです』   科学者は『アダム』にアルファベットを一文字授け、世に知らすことにした。 『アイ』を加え、『AIdam』。表記による読みの違いは無視し、読まないことにした。読まずともただそこにあり、備わっている。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!