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「よし、それじゃあそろそろ出ようか」彼女はそう言ってPCをシャットダウンした。「じゃあここからしばらくは別行動だね。私はちょっと千葉のほうに行ってくるけど、あなたはどうする?」
彼女は深い青色のチェスターコートを羽織りながら私にそう問いかけた。
「私はもう少し新宿を探索してようかな。大きな書店もあるし、比較的新しく作られたみたいなんだけどブックカフェみたいな本を親しむようなところがあるみたいだからちょっと気になるんだよね」
「ほんと、あなたは本や紙っていう物体が好きなんだね。私にはわからないけど、何か惹かれるものがあるの?」
語りかけるその目には若干の奇異と、いつもの優しさが湛えられている。
「まだ少ししか見てないから分からないところも多いんだけどね。本の一冊一冊に作者の全てが込められていたり、エンターテインメントな物語でもそこには今までの生活が散らばっているんだと思う。そして本という『カタチ』って、半永久的なーー私たちの時代では終わってしまったけれどーーところもあって、一度や一人じゃ終わらないって考えると、すごく面白いなと思ってね」
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