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―孤児院―
ある孤児院に「家族」を求める少年がいた。
その少年は、生まれて直ぐ捨てられ、孤児院に預けられた。
理由は口減らし。
貧しい地域では珍しくなかった。
修道女たちは、この少年を含めた孤児たちを 神からの贈り物だと信じ、大切に育てた。
修道女たちの愛は確かにそこにあった。
けれど限界もあった。
本当の両親にはなれない。
修道女たちは、孤児たちの最高の笑顔を似顔絵にして、里親をさがした。
里親さがしは難題だった。
その子が同意、里親も同意しなければならなかった。
時には悪を見抜くこともあった。
修道女たちは、何年間も里親をさがし続けた。
そして、2年後。
9人の孤児を旅立たせた。
別れは哀しかった。
けれど、その笑顔を見ると、なんとも言えなかった。
ただ「幸せになってね」と、他人任せにするだけだった。
孤児院は寂れた。
いい意味で。
けれど、寂れただけで静寂ではなかった。
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