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「いつか結婚しよう」
高校生の頃から付き合い始めた直哉は、そんな言葉を臆面もなく使う人だった。
「いつかって、いつ?」
私が笑いながらそう返すと直哉は真面目な顔で
「大人になってから」
と真っ直ぐに返してくるものだから、逆に私が照れてしまうほどの熱意を持った男だった。
些細な喧嘩は何度もしたけれど、季節が過ぎ、学年が変わり、再び季節が過ぎ、高校生最後の冬に私はこの人と結婚するんだという決意が私の中にも芽生えていた。
『大人になってから』
それはいつなのだろうか。その答えは私には分からない。ただ直哉が言うならば待とう。
真っ直ぐで正直な直哉は必ず約束を守ってくれるから。
私と直哉は同じ大学に進学して、大人になることを夢を見て学業に励んだ。
時々、覚えたてのお酒で一緒にへべれけになったりして、そんなときに『これも大人かな?』なんて思ったりもした。
何かを一緒に始めるときは、いつも直哉が提案者だ。
自動車の免許を一緒に取りに行ったのも直哉が誘ってくれたから。
「車は子供が出来たときのために欲しいしね」
未来を見据える直哉の目。
それがとても好きだった。
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