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田辺先生に雅美の死を告げられた日は、一日中呆けた状態だった。
帰宅すると台所で夕食を作っていた母が、そんな気持ちも知らずに、どうでも良い話しをしてくる。
「最近、変な勧誘の電話が携帯にも掛かってくるのよ? 普通、携帯にまで掛かって来ないわよね? どっかで、携帯番号が漏れてるのかしら?」
「じゃあ、新しい番号に替えて貰ったら? 簡単に出来るでしょ?」
「簡単に言うわねぇ。替えたら色んな人に、番号を伝えなきゃいけないじゃない!?」
「LINEで伝えれば、知り合いには一斉に伝わるでしょ?」
そう吐き捨てるように言い、裕太は母親から逃げるように部屋に行くと、そのままベッドにうつ伏せになる。
裕太が雅美と初めて出会ったのは、小6の時の図書室の図書委員をしていた時だ。
特に好んでなった訳ではなく、ジャンケンに負けた結果、図書委員になった。
つまらなそうに仕事をこなす裕太に、同学年だが別のクラスの雅美は、いかに本が面白いか熱心に説いた。
普段、全然見せない活き活きした雅美の顔に、裕太はいつの間にか恋心を抱くようになった。
本がいかに面白いかは、最後まで裕太に伝わらなかったが、雅美の人間としての魅力は伝わった。
その後、裕太は恋心を頑なに隠したまま、6年の終了と共に図書委員を終えた。
それからは、変な恋心が邪魔になり、雅美と上手く関われなかった。
それは、せっかく中2になり、雅美と同じクラスになれたのに変わる事は無かった。
きっと、本を無理強いして嫌われたと雅美は思っていたに違いない。
そう、ずっと裕太は自分の行動を悔いていた。
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