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しずい邸で働く男娼には、それだけ危険が付き物だということだった。
アザミたち男娼は、金で買われた立場である。しかも、安くはない。むしろ高い。淫花廓は、高級の上にも超がつくほどの遊郭として、存在するからだ。
淫花廓の客は当然、遊び方を心得た者が多かったが、中には男娼に対し過度な振る舞いをする客もいた。
金さえ払えばなんでもさせる、金を払っているからなにをしてもいい、と勘違いする客だ。
彼らは男娼を、物として扱い、暴力を振るい、予めNGだと言っておいたはずのプレイを強要しようとする。
そのときに体を張って男娼をまもってくれるのが、怪士だ。
怪士は、男娼たちが各自で決めた『セーフワード』を口にした際には、なにを置いても部屋に飛び込み、客を引き剥がしてでも男娼をまもるように教育されている。
しかしその『セーフワード』を、男娼は軽々しく口にはできない。一回につき百万円、という巨額の罰金が科せられるからである。
この罰金がなければ、苦手な客が来た、というだけで安易に『セーフワード』を言う男娼が出てくるからだった。
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