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「ではご自分でどうぞ」
素っ気ないほどに淡々と、怪士が応じる。
彼の逞しい腕はアザミから遠ざかり、アザミはそれを、細めた目で見た。
ふ、と吐息して。
アザミはハイヒールの足を踏み出した。
カツっ、と細い踵が床を滑る。
バランスを崩したアザミの体が、左後方へと倒れた。そちらには、蓮の花をモチーフにした、ガラス製の赤いランプが立っている。
「アザミさまっ」
鋭い声とともに、男衆の手が伸ばされ。
アザミの右腕が、強いちからで掴まれた。
そのまま、右側へと引き寄せられ……。
アザミはくるりと体を反転させて、アザミを抱き止めようとした怪士の足を払い、男の重心を狂わせた。
どさり、と。
アザミの体を上にして、男の背がベッドへと倒れ込む。
アザミはすぐに、男の腹の上へと座った。
くつくつと、込み上げる笑いに細い肩が揺れる。
「おまえなら、僕をたすけると思ったよ」
だからわざとランプの方へ倒れたのだと、アザミは暗に告げて。
黒装束の上に手を這わし、男の筋肉の感触を確かめた。
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