第3話

3/5
前へ
/180ページ
次へ
 男娼に傷をつけてはならぬ、という決まり事と。  男娼とは関係をもってはならぬ、という禁忌事項の中で。  揺れながら、アザミによって勃起させられ、望まぬ性交を強いられているのだ。  アザミは長い睫毛を瞬かせて、まとわりついてくる虚無を払うと、 「そのまま、じっとしておいでよ」  傲慢な微笑を浮べて。  怪士の腹に手を付いたままで、腰を動かし始めた。  ぬちゅっ、ぬちゅっ、とぬめった音を立てながら、男の剛直がアザミの中に放たれた、他の雄の精液を攪拌(かくはん)する。  その音を聞きながら、アザミは。  初めてこの男と出会ったときのことを、思い出していた……。  それはもう、十年以上も前のことで……。  アザミが、まだ、アザミでなかったときのことであった。    ***  淫花廓には、地下通路がある。  川を挟んで並び立つ、ゆうずい邸としずい邸。二つの建物を繋ぐ道は、地上には存在しない。川幅は2メートルほどで、土手を入れても3メートルそこそこだろう。渡り廊下で両邸を繋げない距離ではないだろうと思えたが、ゆうずい邸としずい邸の男娼同士の接触は禁止されていて、それゆえの措置なのだと説明を受けた。       
/180ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1494人が本棚に入れています
本棚に追加