第3話

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 戻り橋を渡って淫花廓までの道を進むと、六角形の蜂巣の連なりを抜けて、ゆうずい邸に行きつく。  そのゆうずい邸から、しずい邸へ繋がる道は、ゆうずい邸の地下から伸びる、この地下通路だけなのだった。  (ふる)い旅館のようにも見える淫花廓だが、この通路だけは現代のテクノロジーやセキュリティシステムを活用した堅固なもので、楼主か、もしくは限られた男衆と一緒ではないと通行できないようになっているとのことだった。  男衆、というのは、いま少年の手を引いている翁面(おきなめん)か、もしくは怪士(あやかし)という能面を被っている男たちのことだという説明は、すでに受けていた。    高額な借金とともに少年を残して、両親は蒸発した。  少年は齢12で、返せるはずもない額の借金を背負い、闇金業者に連れられて、ここ『淫花廓』へと連れて来られたのだった。    翁面が地下通路の入り口に立つと、電子音が聞こえ、自動で扉が開いた。扉は三重になっていて、薄暗い天井を見上げると、監視カメラが設置されているのが見えた。  ひんやりとしたその空間を歩き、少年はしずい邸へと入る。  エレベーターで一階へ上がると、そこは広間になっていて、そのスペースは木の格子で大きく二つに区切られていた。     
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