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第4話
男の酷薄な目が、少年を見下ろして胡乱げな半眼になった。
「おい」
低い声で、少年の背後へ控える翁面へと問いかける。
「本当に、般若が見たんだろうな?」
磨き抜かれた板張りの床に膝をついた翁が、頭を下げたままで「はい」と答えた。
「確かに、般若が。その上で、しずい邸で使えるだろう、との判断を下されました」
「……なるほどなぁ。ずいぶんと汚ぇが、……磨けば光るということか」
首を捻りながら、懐手した指で顎をこすり、煙管を摘まんで唇から離した男が、今度は少年を「おい」と呼んだ。
返事をしなさい、と翁に促され、少年は先ほどの翁と同じように、
「はい」
と口にした。
垢じみた少年の爪先から頭のてっぺんまでを、男が睨めあげて、抑揚のない口調で語りかけてくる。
「おまえは借金を背負っている。それはわかっているな?」
「はい」
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