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楼主の眉が寄った。
未通、という言葉を、少年はつい数日前までは知らなかった。
金貸しの男たちに掴まり、両親の居場所を吐けと言われて暴行を受け、その時に数人の男に犯された。
「淫花廓に売るんだから、未通の方がいいだろう」と男たちがひそひそと話しているのを、誰かの牡に貫かれながら、少年は耳にした。
言わなきゃバレねぇよ、と囁き合って笑う男たちは、ここに来る前に、少年へと「余計なことは言うなよ」と釘を刺すのを忘れなかった。
少年の言葉に、楼主が煙管を咥えた唇の端で笑った。
男がゆっくりと立ち上がり、銀鼠色の着流しの裾を揺らしながら歩み寄ってくる。
懐手した手が、持ち上がった。
殴られる、と思った少年は、口の中を切らないようにぐっと奥歯を噛みしめた。殴られることには慣れていたので、恐怖はあまりなかった。
「子どもってのは愚かだなぁ」
そんな呟きとともに、男の指が、少年の顎を捉えた。
年齢の判然としない、老成した黒い双眸が、じ……、と少年を見下ろしている。
こころの奥底までを暴かれそうな眼差しだった。
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