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足の引っ張り合い、というものも、存在した。
垢じみた少年は、翁面の手によってその魅力を開花させつつある。ぼさぼさだった髪を整え、全身を小綺麗にし、栄養面も補われると、少年の外見のうつくしさは、彼を見た者すべてが気付くところとなった。
そのことに、他の男娼が自身の立場の危うさを感じたのか、それとも単に少年が気に食わなかったのか、少年はよく、しずい邸の中で地味な嫌がらせをされた。
少年はまだ体が仕上がっておらず、男娼として廓に立つことができないため、日ごろは下働きをしている。
主に割り当てられるのは掃除だった。
蜂巣、と呼ばれる六角形の建物と、その周辺である。
淫花廓の敷地は広大で、男娼見習いである少年は本館からあまり離れていない場所……つまり、男衆、と呼ばれる能面を付けた彼らの目が充分に届くところで作業させられているのだった。
男衆が居るからだろう。嫌がらせは、大々的なものではない。
本当に地味な……例えば、男衆の見えないところで足を引っ掛けられるとか、掃除を命じられた場所がものすごく汚れているだとか、食事にゴミなどの異物が混入している、とか、そういった類の嫌がらせが多かった。
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