プロローグ

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 赤い唇を吊り上げて笑うアザミへと、嘆息が返された。 「あなたのうっかりは、これで何度目でしょうか」  男の精一杯の皮肉に、アザミは、うつくしい微笑を向ける。 「ふふ……。その僕のうっかりに、毎回律儀に付き合う男衆は、誰なんだろうね」  伸ばした髪を、さらりとかきあげて。  アザミはハイヒールの脱げかけた足を、怪士(あやかし)の面へと差し出した。  男の大きな手のひらが。  アザミの、足首を捉えて。  恭しいまでの仕草で、赤いハイヒールが足に履かされた。  男の手の熱は。  アザミのこつりと浮き出たくるぶしの骨の辺りに。  いつまでも残るかのようだった……。
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