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第2話
男の武骨な指は、太い。
アザミはそれに、己の指を絡める。
怪士の面の下で、男がどんな表情を浮かべているのか、それを想像するのは、楽しくもあり、恐ろしくもあった。
アザミはホクロのある口元を淫靡に歪めて、握った男の手を、己の下半身へと導く。
ピクリ、と逞しい筋肉が反応し、男がアザミの手を軽い動作で振り払った。
男衆は、男娼に乱暴はしない。
商品を傷つけることはご法度だからだ。
だからこのときも、怪士はアザミの手を傷つけない程度のちからで、そっと、アザミを遠ざけたのだった。
「できません」
と、男が繰り返した。
「後始末をご所望でしたら、翁を呼びます」
翁、と怪士が口にしたのは、翁面を着ける男衆のことだ。
男衆の役割は、大きく二つに分けられる。
まず、この男のように怪士の面を着けた者は、男娼の身の回りの世話役を楼主から仰せつかっている。そして、いざというときのボディガードにもなる。だから怪士は、筋骨隆々とした男が多い。いま、アザミの目の前にいる男も、鍛え上げられた体つきをしていた。
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