プロローグ

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プロローグ

 蜂巣(ハチス)、という建物がある。  六角形の、さして広くもない空間である。  床は、畳敷かフローリングかが客の好みで選べるシステムだ。それぞれに応じて、(しとね)が布団かベッドになる。  今日はフローリングだ。磨き上げられた床を、アザミはハイヒールの踵で踏んだ。  女物のパンプスの色は赤だ。  アザミには赤がよく似合うと言われる。  白くすんなりと伸びた足の間には、今日の客がうずくまり、熱心にアザミの陰茎をしゃぶっていた。  犬のようなその舌の動きがくすぐったくて、アザミはふふっと吐息する。  蜂巣の壁の一辺には、丸窓があり、そこから庭の池がよく見えた。  十字の格子の向こう。青空を羽ばたく鳥がいる。俯瞰の眺望からは、敷地内に点在する蜂蜜色の屋根をした蜂巣の連なりは、さながら本物の蜂の巣のように見えるのだろうか?  ばさり、というその羽音が聞こえてきそうで、アザミは窓から視線を引き剥がした。  蜂巣の中には、アンティークなランプとベッド、それから備え付けの小作りな箪笥しかない。  いつ来ても殺風景な部屋だ。  まぁ、蜂巣の用途が、『やる』為だけの部屋なのだから、それも已む無し、というところか。     
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