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あの時のあの場所の
食いしばる歯に滲む血と、溢れる血の涙の源泉を、私はこの身の内に受け続けていた。それはどこまでも悍ましく汚れた圧倒的暴力だった。
今日も規則正しい泥のついた軍靴の音が聞こえて来る。
私を抉る男たちの汗臭い欲望。それはこの身の終わりまで続いた。
私という連続に今日も穴が空く。
全ての痛みの連続と、全ての苦しみの連続がそこにある。それはもう遠い物理的時間の彼方に終わったはずだけれど、今でも私の魂の一番の内側から、繰り返し繰り返し何度も何度も私を犯し続ける。
痛み、痛み、痛み・・、
この痛みの永遠と、それが永遠であるという痛み。その二つともに私は絶望しなければならない。
赤い日の丸が揺れる。もうそれは動き出してしまった。もう誰にも止められない。誰も知らない終わりまで。
「私には全く分からない・・」
「あなたが一体何にそんなに苦しんでいるのか」
「そんなに簡単に分かってたまるもんですか」
私の記憶は現実なのよ。
病んだ狂信者の宴。感染する愛国。狂人が権力を握って走り出す。
「私はそれは違うと思うの」
「でもあなたは見ていないでしょ」
「えっ?」
「私は見たのよ。あの時、あの場所を」
「私は・・・」
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