一枚余るプリント

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 これは、私が勤務していた中学校でのことです。  私はその当時、4クラスほど授業を持っていました。自分で言うのもなんですが、生徒からの評判はよく、私もそれが誇りで、やりがいでした。  そんな私でしたが、普段から少し気になることがありました。それは、プリントをコピーすると、必ず一枚多いことです。しかも、それはあるクラスのときだけです。最初の頃は、あまり気にしていなかったのですが、毎回プリントが余るので、不気味に感じていました。  このクラスは、生徒が32人、私も含めれば33人です。ですから、原本は私が、コピーした32枚を生徒へ配ることになります。  しかし、いつも一枚余るので、コピーされるのは33枚、ということになります。ですが、私は32枚コピーするように設定していますし、他のクラスでは余りません。なぜかこのクラスだけなのです。  ある日私は、あまりにも気になり、コピーされたものを数えてみました。まずはコピー機に32枚と設定し、出てくるプリントを、一枚一枚もれなく確認します。このときは、指定した枚数通り32枚でした。  次に束にまとめたプリントを数えました。このときも32枚でした。  そして、最後に数えたのは、教室で配る前。…………32枚。  気のせいだったと思いました。ですが、それは気のせいではなかった。私がクラス全員にプリントを配り終えると、やはり手元には一枚残りました。 「誰かプリントをもらっていない人はいるか?」  そう尋ねても、生徒は誰も反応しません。教卓の上には原本があります。だとすると、この一枚はなんなのか……。私は突然怖くなり、生徒たちに尋ねました。 「なあ? このクラスって32人だよな?」  当たり前のことを尋ねる私を、生徒たちはクスクス笑い始めました。目立ちの男子が、 「先生も入れたら33人ですけど?」 と言ってきました。それでも私は納得がいかなくて、もう一度尋ねました。 「このクラスって本当に32人だよな? 『33人じゃない』よな?」  すると、生徒たちは突然しーんと黙りました。私があまりに怯えていたので、怖がったのでしょうか。自分の勘違いで生徒たちを怖がらせてはならない、と思い、冗談だということにしようとしました。そして、訂正しようとした瞬間、 『なんでわかった? ナンデワカッタ? なんでワカッタ?』  突然生徒が叫び出したのです。すると、私は気を失ってしまいました。
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