ツク

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ツク

 特別養護老人ホームは、略して特養と呼ばれている。この特養に勤めて最初の一か月は、とにかく日勤に慣れ、利用者の特徴を掴むよう言われた。  それまでわたしは小規模のデイと訪問介護の経験しかなかったので、特養で見聞きすること全てが新鮮だった。  ここの利用者は、わたしがこれまで関わって来たどの利用者よりも介護度が高く、認知症の度合いも強く表れている。予想もつかないトラブルが起き、てんてこまいになることもしょっちゅうだった。この特養は市内の中心部、ビルが立ち並ぶあたりから少し離れたところに位置している。車どおりはそれなりに多く、もし歩くことのできる利用者が職員の目を盗んで、ふらふらと外に出ようものなら、どんな大惨事になるかわからない。  箱の中に閉じ込められるようにして生活する利用者と、その同じ箱の中で仕事をする職員達。  建物の外が賑わう程、閉塞感が増す。     
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