ツク

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 やがて早朝勤務の職員がやってくる頃には少しずつ施設は落ち着きを取り戻し、朝食の介助が終わる頃には、わたしはもうくたくたになっていた。 **  「おっつかれー」  勤務が終わる直前、Aさんがコーヒーを持って来てくださった。  ありがとうございます、と言って受け取って飲み始めた。体に沁み込むように熱い。  「しょっぱなから大変だったねー。ゴクロウサン」  細い目をにこっとさせて、Aさんは言う。おおらかで安定した人柄は、きっと利用者にも愛されているんだろう。  わたしは思わず、Aさんに「ツキ」のバトンが留まっているのは、命を終えるならAさんが側にいる時、と利用者たちの願いが現れているからではないかと考えた。  だとすると、ある意味勲章なのではないか、そのバトンは。  「やっぱり、ツイてましたねえ」  冗談めかしてわたしが言うと、Aさんは、ちらっとわたしを見た。ううん、まあね、と、なにか歯切れが悪い。    「でもさー、今日ツイてたのって、わたしじゃなくて、もしかしたらさ」  Aさんは言いかけた。その時、向こうから看護師がAさんを大声で呼んだ。夜勤帯の様子について聞きたいことがあるのだろうか。  はーい、とAさんは言うと、元気に走っていき、はっと立ち止まって振り向いた。にこおっと、細い目を笑み崩す。満月のような白い顔は、夜勤後でもつやつやしていた。     
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