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その職員は、もぐもぐとごはんを食べながら言う。ヤバイ人、というのは、看取りの利用者である。ものを口から食べられなくなった時点で、施設から家族へ、療養型にうつるか、この特養で看取り対応を希望するか決断を促す。看取りになるということは、そのまま特に医療的な処置をとらず、静かにその時を待つ、ということだ。
ちょうど今、うちのグループは四人もの利用者が看取り対応になっている。
「いえ、でも看取りと言っても、みなさんお元気ですよ」
わたしは答えた。少しずつでもごはんを食べているし、お話もされる。今すぐにどうということはなさそうなのだが。
実際、看取りとなってから、四人の利用者は半年も元気でおられる。
「うんまあね、でもAさんだからねえ」
と、その職員は言い、そこで休憩が終わった。
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Aさんの介護は丁寧だし、看取りの人に手荒いことは絶対にしないはずだ。
さっきの職員は一体なんのことを言ったのか。なにかひっかかるものを感じながら、わたしは初めての夜勤に臨んだ。
一緒に夜勤に入って指導してくれるAさんは、その晩もにこにこと穏やかに「よろしく頼むねえ」と言った。なにごともなく夜勤は始まり、極めて静かな夜が過ぎていった。
最初のオムツ交換が終わったら、軽食タイムとなる。がらんとして暗いホールで、わたしとAさんは食事を摂った。
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