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夜勤の時に、よく利用者が亡くなることを、ツクという。
そして、そのツキは、職員たちにバトンのように巡ってくるらしい。
長年勤務している職員は、だいたい一度はツイた経験があるという。Aさんの場合、あまりにもツイている期間が長く、バトンが他に回らないままになっているらしいのだが。
「まー、次に誰に渡るのかわかんないしね。早く渡したいんだけどね。ほんとに」
Aさんは笑う。
先に仮眠しておいでよ、次にわたし入るからね。
Aさんは細い目で笑うと、わたしを仮眠室に送り出した。グループごとに時間をずらして一時間の仮眠を取るのだが、今夜はわたしとAさんの二人体制なので、グループ内で交代して仮眠することになる。
申し訳ないような気がしたが、先に仮眠に入らせていただく。
仮眠室に入った時、昨日、昼休みに聞いた話を思い出してぞっとした。
「Aさんが仮眠の時は大丈夫なの。不思議なことに、Aさんが起きている時にヤバイことになる。多分井川さん、先に仮眠に入るけれど、仮眠から起きて来たら、誰か亡くなってるかもしれないね」
(いやだなあ)
ふとんを被りながら、鳥肌がたつ思いだった。
四人いる看取りの利用者はみんな普通だった。呼吸が乱れることもなく安眠している。
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