ツク

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 (脅かすのもたいがいにしてほしいなあ、最初の夜勤なのに)  おかげで、まんじりともしないまま仮眠が明けた。  とぼとぼと戻ってゆくと、夜中でも元気なAさんが、「おかえりー、何事もなかったよ」と言った。わたしはほっとした。  「いつもだいたい、この時間なんだよね。それもあって、井川さんに先に仮眠に入ってもらったんだけど、なにもなかったってことは、今夜はとりあえず大丈夫」  と、Aさんは細い目を三か月のように笑み崩して、仮眠に入っていった。  しいんと一人残された暗闇のホールでは、ちくたくと壁の時計が音を立てている。  わたしはパソコンを打ち始めた。バイタルチェックした記録を打ち込まねばならない。  かちこちかちこち。  ホールの時計の音が、響き渡る。こんなに秒針の音は激しかったか。  あまりに気が散るので顔をあげた。ふいに、信じられないものを目にして固まった。  ホールの壁にかかっている時計は、電波時計ではなかったはずだ。  ぐるっと、針が逆方向に回るのを、わたしは見た。目の錯覚かと思ったが、確かに時計は逆さ回りした。  一瞬後、瞬きして時計を見直すと、なんのことはない、正しい時を刻んでいる。ああ、疲れてるんだ、初めてだし緊張してるから、と、ため息が出た。     
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