ツク

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 時計がぐるっと一時間戻った気がしたのは、ただの錯覚。  パソコンを打ち込んでから立ち上がる。そろそろ巡回の時間だ。一部屋ずつ、そっと見て回る。大丈夫だ、どの利用者も眠っている。なんて穏やかな晩だろう。やはりわたしはラッキーだ、ツイている。  そしてわたしは、Aさんが気にしていた看取りの利用者の居室に入った。一人部屋である。  (……さん、寝てるかな)  そっと覗き込むと、穏やかな顔で、口をぽっかり開いていた。  寝ていると思った。そのまま見逃すところだった。だけど、なにか呼び止められたような気がして、もう一度わたしは、その看取りの利用者をよく観察した。  呼吸が、停止していた。 **  後から考えると、最初の夜勤で、最初の逝去に遭遇した割に、冷静に対処できたと思う。  仮眠中のAさんを起こすよりも先に、隣のグループの夜勤者を呼びに行った。十年戦士のその夜勤者は、比較的冷静に、その利用者の様子を確認した。そして、亡くなっている、と、言った。  「Aさん起こしてきて。というか、こういう時の対応、教えてもらってる」     
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