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と、きつい口調で聞かれるのでパニックを起こしそうになったが、なんとか、まず家族に電話をし、次に今日の夜間連絡係、それから夜間の当番の看護師、病院に連絡することをどもりながら暗唱した。
隣のグループの夜勤者は無表情に頷くと、「じゃあ、そうして」と言い、自分は他のグループの夜勤者を呼びに走っていった。
部屋には、わたしと、今亡くなったばかりの利用者だけが残された。
(そんな、Aさん今仮眠中なのに。話が違うじゃないか)
べそをかきそうになりながら居室から飛び出して、ステーションに飛び込んで電話をかけた。
だいたいの手続きが終わったところに、「ふぁー、ごめんごめん」とAさんが戻ってきた。わたしは安堵の余り、椅子に座り込んでしまった。
「お、えらい。ちゃんとできたねー。もうわたしの付き添いはいらないかな」
と、Aさんはいつものおおらかな調子で言った。
亡くなった利用者の居室には既に他の夜勤者たちが押しかけている。わたしはやっと緊張が解けた。ふうっと息が抜けた。
それから朝までは、家族やら看護師やら、出入りが激しくててんやわんやだった。
医師が来て死亡診断を出してくれたのは、もっと後のこと、既に明るくなってからである。
その間、仕事は流れ続けており、他の利用者のバイタルチェックやオムツ交換を経て、朝が近づくとベッド移動や離床が始まる。
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