20章 バイトの王子さま

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・ 起き上がった晶さんは力で競り合ったせいか、肩で息を繰り返してベッドの上から睨む顔を休めないでいる。 「努力ってなにしたわけ」 俺は晶さんを上から見下ろした。 聞いてやろうじゃないか… 晶さんが俺の為にした努力ってヤツを── 「言いなよ、俺が納得できる努力をしたって言うならっ…」 「……っ…」 喧嘩腰の俺を晶さんは睨みながら凶器の紙袋を抱き締める。 目には少しの涙を溜めて反抗する瞳を俺に向けていた。 口を開かない晶さんに何故か勝ち誇った顔で俺は笑ってみせた。 正直、何を勝ち誇ったのか…… 俺の為に努力したって言い切る晶さんが証拠になること一つ語れないでいるのに…… 勝ち誇る意味が自分でよくわからない── どっちにしても、やっぱり俺って惨めなヤツじゃん…… そんな自覚を確信して悲しくなった…。 「努力の証拠は?…」 「……っ…」 悲しくなるのはわかってるのに追及することがやめられない。 もうどうでもいい── とにかくこの負けん気の強い雌虎を黙らせて押さえつけて──っ… エッチしたい。。。 そう然り気無く息巻く俺を見据えながら、晶さんは抱き締めていた紙袋を俺に向けて突然突き出した。
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