四章:私を忘れないで

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「え、二人が出会ったのって中学校じゃないんですか?」 『正確には違うわ。小学校の低学年の時に商店街で出会ったことがあるのよ。その時理恵先輩は迷子で、私と一緒に商店街を回ったの。それでお母さんに言ってこのゴムを買ったのよ』 「大田君に告白して、断られた後に分かったんです。崎重さんから呼ばれて会った時に、髪留めのゴムに見覚えがあったので確認してみたら、というわけです」  僕だけでなく、賢人と愛夢ちゃんも驚いている。すると、上野先輩が彩夢に問いかけた。 「崎重さん、この髪留め用のゴムはまだ持っているんですか?」 『バッグの中に入れてはいたんですけれど、今はどこにあるかはわかりません。でも、大切に持ってはいたんですよ?』  上野先輩は優しい表情で「ありがとう【彩夢さん】」と彩夢の名を呼んだ。  あれ、そういえば上野先輩はどうして彩夢を「崎重さん」と呼んでいたんだろう?   僕がそれを聞こうとした時に彩夢が先に問いかけた。 『理恵先輩、どうして私のことは名前で呼んでくれなかったんですか? 初めて会った時は彩夢さんって呼んでくれてたのに』 「一番は嫉妬です。大田君と付き合っていることが分かって私は嫉妬して、彩夢さんと呼ぶことが出来なかったんです」     
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