一章:さようなら……じゃないの?

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 僕はスマホを耳元まで持ってきて「上野先輩、動いてます……クマの人形が」と今の状況をありのまま伝えた。上野先輩は『え? どういうことですか?』と聞き返してきた。  すると、クマの人形が『和儀、アンタ信じてないでしょ』と怒りを滲ませた声で物凄い怒りのオーラを出しながら近づいてくる。 「し、信じられるわけがないだろ! 彩夢は死んで、確かにお葬式もしたんだ!」 『それは私の身体の話でしょ! 魂か何かは分かんないけど、私はこのクマの人形に憑りついちゃったのよ!』 「あ、彩夢なら証拠を言ってみろ! 彩夢だって証明できること!」  僕はドラマの犯人のような言い方をしてしまう。電話口の上野先輩も『大田君! 落ち着いて下さい! 崎重さんはもうお亡くなりになっているのよ!?』と叫んでくる。  どうやら僕がおかしくなったと思っているようだが、僕自身、幻覚を見ているのかもしれない。 『証拠? 何を言ったら信じるのよ? 生年月日とか言っても信じてくれないでしょ?』 「そ、それでいいよ! 彩夢の誕生日は!? 間違ってたら」 『1999年11月24日』  クマの人形は即座に答える。……合ってる。 「じゃ、じゃあ僕たちが付き合ったのはいつ!? あと、僕があげたプレゼントも言ってみてよ!」     
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