三章:独りで頑張って何が悪い

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 彩夢はトランプを置くと、僕に向き直る。 『私がやり残したこと、二つ目は賢人君に頑張る意味を、人に頼ることを教えてあげることなの』 「賢人に? でも、頑張る意味って、賢人は美大で頑張ってるよ?」 「そうだよ、お姉ちゃん。それに井坂さん、私の一件の時に周りの人に沢山頼ったって聞いてるよ?」 『うーんと、賢人君って自分じゃ出来ない事、分からない事は人に頼るんだけど、出来るんじゃないかって思ったことは自分でやり通そうとするのよ。良いことではあるんだけど、賢人君がいる世界、美術の世界では頑張るだけじゃ評価される世界じゃないじゃない?』  彩夢の説明で話が見えてきた。 「あー、賢人は負けず嫌いだからね。特に競う世界では自分だけで成果を出したいって思う性格だし」 「でも、美術の世界で上に立つって相当難しいんじゃないの? スポーツとかと違って明確な基準なんて無いんだし」 『そう。それで賢人君は今苦しんでるの。和儀、覚えてる? 賢人君、よく絵の賞とかに応募して受かってたじゃない』 「ああ、中学とか高校の時? 毎回大きな休みの後は何かしら受かってたよね。今もそうじゃないの?」     
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