三章:独りで頑張って何が悪い

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『私が知っている限りだと今はほとんど受かってないみたいなの。いろんな賞に応募してるけど、ほとんどダメで。それで賢人君、かなり落ち込んでるの』  僕は首を傾げる。僕が大分元気になったから賢人と上野先輩が生活に必要な物を持ってくることは無くなった。  上野先輩は今でもたまに様子を見に来てくれるけれど、基本的には愛夢ちゃんが来るから問題無いと思っているみたい。  だけど、賢人はこの前会った時に元気が無いようには見えなかったけどな……。だけど、スランプではあるのかもしれない。  描いた絵は大事にする賢人だけど、彩夢をスケッチした物をクシャクシャにして捨てていたから。 「だけど、それでどうして頑張る意味を教えるになるの? 美術の事が分からない僕たちが変にアドバイスしたら賢人怒るんじゃないかな?」 『今和儀が言ったじゃない。自分だけで成果を出そうとするって。どれだけ才能があっても、一人じゃ限界があると思わない?』 「あ、だからお姉ちゃん頼ることって言ったんだ」  僕は考える。彩夢が言っていることはなんとなく分かる。どの世界でも一人で成果を出せる人なんて一握りしかいない。  賢人はその一握りになろうとしているって事だろう。だけど、それを理解させるのは、ある意味愛夢ちゃんの時より難しい気がする。     
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